中小企業のAI活用 第9章 AIシステムの開発法

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 今回はAIシステムの開発法についてお話します。まず、AIシステムとは何かと言う事ですが、第6章で、識別、会話、予測、実行の4つがAIアプリケーション(AIで出来る事)であるとご紹介しました。また、第4章の機械学習の話では、アイスクリーム屋さんの需要予測の例を出しましたが、これは予測にあたります。例えば、アイスクリーム屋さんが明日の天気、気温、イベント情報をAIに入力すると、明日の売上数量を予測する。このようなシステムがAIシステムという訳です。

 では、AIシステムはどのように開発(創る)すればいいでしょうか?従来の販売管理などの業務システムの場合、パッケージを利用するケースとスクラッチ(独自開発)するケースがあります。ご存知のように前者は建売住宅で、後者は注文住宅に似ています。AIシステムではどうかというと、AIパッケージという言い方はあまり聞きませんが、ここではあえてAIパッケージとAIスクラッチという言い方をします。その違いは次の点です。

①AIパッケージ(あえてパッケージと記述します)
 AIは予めデータを使い学習する必要がありますが、既に学習された学習モデルを使う事ができます。IBM-Watsonには多くの学習済みモデルを使ったサービスがあります。例えば、この中の「speak to text(音声を文章に変換する)」は学習済モデルを使って、音声から文書起こしができます。また、自分で学習モデルを構築する事もできます。これは、既にAIアルゴリズム(例えば予測するAIがプログラミングされているもの)が出来ていて、さらに学習モデルもできているものです(或いは自分でデータを使い学習させる事ができる)。このようなタイプを、ここではAIパッケージと呼ぶことにします。

②AIスクラッチ(独自開発)
 こちらは、自社のニーズにあったAIを一から作るタイプです。従来の生産管理システムをスクラッチで開発する場合、古典的な開発手法の場合、まずユーザー企業の要望をまとめる「要件定義」があり、次に画面や帳票を設計する「機能設計」があり、プログラミングなどを経てシステムが完成します。AIシステムも基本的に同じ流れになりますが、1つ大きな違いがあります。それは、AIシステムには概念検証(POCフェーズ)がある事です。

例えば、A君は京都大学を目指す受験生です。頑張って受験勉強をしており、受験までに模擬試験を受けます。模試で点数が悪ければ、受験までに自分の弱点を克服する勉強をする必要があります。しかし、受験間際の模試で成績が悪ければ京都大学受験を諦めなければならいでしょう。概念検証はこれに似ています。AIは予めデータにより学習するのですが、学習の後に学習結果の検証を行います。結果がよければそのデータを使いAIシステム開発に入りますが、結果が悪ければ最悪AIシステムの開発に入る事ができません。ここが従来のシステム開発との大きな違いなのです。さらに、この概念検証は従来のSEスキルでは対応できないため、AI専門家やAIエンジニアが対応する事になります。実は、私はこれらの人材が少ない事が、特に中小企業にAIシステムが普及しない原因の1つと考えています。

さて、AIシステムの開発法についてお話ししましたが、企業が自社の経営・業務解題を解決する為には、もう1つ越えなければいけない壁があります。それは後の章でお話します。


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